こんにちは。
今日は、
「スペシャリストとジェネラリスト」
というテーマについて、お話をしようと思います。
まず、スペシャリストというのは、特定の分野について秀でた知識や技能を持つ人のことを言いますよね。
それに対してジェネラリストというのは、様々な分野の知識、多様な視点を持つ人、わかりやすく言うと、(一般にスペシャリストほど深くはないけど)守備範囲の広い人のことを言います。
従来の音楽教室、音楽教育は、スペシャリストを育成することに重点を置いてきたといえると思います。
それはクラシックの演奏家を育成する過程がそうであるためです。クラシック以外の音楽でもクラシックの影響はとても大きく、スペシャリストの育成に重きを置くことが多いように見受けられます。
では、音楽におけるスペシャリスト、ジェネラリストとはどのようなものでしょうか?
例えば、ピアニスト、フルーティスト、ギタリストなどはスペシャリストです。
プロデューサー、アレンジャー、はジェネラリスト、シンガーソングライターあたりもどちらかと言えばジェネラリストです。
スペシャリストは職人的な技を持った人、ジェネラリストは...一見するとよくわからない、でもいろいろやっている人です。

それでは、現在の音楽、音楽家を取り巻く環境が、スペシャリスト、ジェネラリストそれぞれに対して、どうなのか考えてみましょう。
最近の傾向として、スペシャリストはどちらかというと競争が激しい傾向、対してジェネラリストは、まだまだ活躍の場がありそうです。というより、ジェネラリストは自分で活動の場を作ることが出来ます。
おそらくこの傾向はこれからも続くでしょうし、よりその度合いも増すと思います。
なぜ、そうなのかというと、音楽のジャンルが細分化されていることや、CDが売れないことに加えて、パソコンやインターネットの存在も大きいように思います。
さらに、音楽以外にも、様々な芸術や娯楽が発展してきたことも、見逃せない要因です。
音楽のジャンルの細分化は、多ジャンルに人気が分散し、特定のジャンルの音楽が、多くのリスナーや愛好家、演奏者やクリエイターを抱えることが出来なくなることを意味します。
CDが売れない、大ヒットが出にくい状況は、制作チームの規模が縮小する方向に向かう要因になります。
そして、パソコン、インターネットなどの技術は、大資本のスポンサーがつかなくても、音楽を発信できる環境を生みました。
全体的に、
音楽はより身近になる一方で、
大人数でのコンサートやレコーディングは減る傾向
にあります。
それが、ジェネラリストが活躍の場を得ることと何の関係かあるかというと、コンサートであれ、レコーディングであれ、一緒に制作するチームの中に、ジェネラリストがいるかいないか?ということがそのチームの意思決定や、様々な場面での作業効率に大きな影響を与えるからです。
一般にジェネラリストは、作業の優先順位を決めたり、スペシャリスト同士の潤滑油やのりしろのような役割を果たすことが多く、リーダーシップを発揮することも多いです。そしてこれは、音楽でも同様のことが言えます。
一つ一つのチームが小さくなり、代わりに多くのチームが出来れればその分、ジェネラリストの需要は高まります。
例えば、「大きなコンクールで賞を取りまくってピアニストになるんだ!」とか「音大を首席で卒業して名門のオーケストラに入るんだ!」または、「誰よりも歌が上手くなって有名になってやる!」みたいな方は、そのままスペシャリストを目指してください、何の問題もありません。
ただ音楽家にとって、スペシャリストとして社会に居場所を確保することはとても困難なことです。その点ジェネラリストのほうがもう少し居場所があるように思います。
私は音楽において、スペシャリスト、ジェネラリスト、どちらを目指すべきか迷っている、もしくは、明確にどちらになりたいという意思がないのでしたら、ジェネラリストになるということも選択肢に加えることをおススメします。また、音楽をそこまで極めようとは思っていないとしても、音楽を通して、ジェネラリストの視点を養うことが、将来にきっと役立つと思います。
今の音楽教育は、各楽器のスペシャリストの講師が、スペシャリストを育成するという形が圧倒的に多いです。
それ自体が悪いことではないのですが、音楽の学び方にジェネラリストという選択肢がないかのように見えてしまう(実際には現状もあるのですが)のは、(特に)若い音楽家にとって少し問題ではないかと思っています。
ここからは完全に余談ですが、私はジェネラリストです。
音楽を本格的に始めたのが年齢的にかなり遅かったですし、楽器や歌の才能があったわけでもないので、意図的にジェネラリストになることを選びました。
私はポップスを主に勉強してきたのですが、例えば、曲を作って、詞を書いて、アレンジして、楽器を演奏して、歌を歌って、それらを専用の機材やパソコンを使って録音し、CDを作る、そしてそのCDの曲を演奏するコンサートを企画し、自分でコンサート機材を用意して操作して、もちろん演奏もする.....これ、一人ですべてできます。もちろん一緒に作業をしてくれるスペシャリストがいれば、より良いものになるのですが。
Tiny Studio music schoolでは、自分の専門の楽器以外にも視野を広げるために、CDを作る実習形式の単発のレッスンなどを、生徒さんに提案していきたいと思っています。
wrote by 谷本富久
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